湿度の庭

湿度の庭
入院している祖母の見舞いで、とある病院を年に数回訪れる。入院患者の半分は、ベッドから一歩も外に出ないで一日を過ごしている人だ。もう半分は、自分で自由に歩いたり、車椅子で動き回ることのできる人たち。見舞いに来る人もかなりいる。

見舞いに行くと、祖母は食事をしたり眠ったりおしゃべりをしたり、お付き合いは数時間に及ぶこともある。気分を変えたいとき、私は売店にゆく。この病院は1階に売店があり、各階にはロビーがあり、また屋外の中庭には遊具もある。私は、非常用の滑り台が一番面白そうだと思ったりする。

一見すると様々なアメニティが病院のあちこちにあるようなのだが、実はそれがばらばらで有効に機能していないと感じる。売店で買ったコーヒーを飲む場所が無いし、ロビーにはテレビだけがあり無機質な感じがするし、中庭にはいったいどこから行けるのかわからない。これだけの機能がもしまとまってデザインされていたらどうだろう。

まるでそこに庭があるかのように元気な緑がいっぱいの待合室で、美味しいコーヒーを飲み、まあテレビでも見るか、読書でもしようか、という具合である。屋外に出るのが難しい患者も、ここならOKということになれば、患者も見舞い客も、毎日介護に通う家族も、皆にとってのオアシスになるのではないだろうか。もちろん多くの人が出入りする場所だから、新鮮空気はたくさん必要である。きれいな新鮮空気が、小川の流れのように絶えることなく、自然に入っては出てゆくような。

名づけるとしたら、”湿度の庭”。こんな活動的な空間、あったらいいな。

PS dialogue.2013.02

TOPへ