湯の流れ

 

熊本県玉名市天水の小天(おあま)。ここは夏目漱石が熊本五校教師時代に訪れ、小説『草枕』を生んだ地です。小天で漱石が滞在した前田家別邸は、現在も一部が残っています。小説には、画家が湯につかっているときに女が入ってくるシーンが描かれていますが、この風呂場のモデルとなった前田家の風呂も現存しており、見学することができます。

草枕交流館の解説員のお姉さんが、その風呂について教えてくださいました。小天は温泉地で、その風呂も天然温泉であったそうです。地中から湧いた湯を使うには、風呂の場所を地下にする必要があったそうです。昔はポンプなどありませんでしたから、どこの温泉風呂の作りも地下室のようになっていたとのことです。漱石が風呂につかっていると、階段を下りてくる女がいて…、それが小説の一シーンになったそうです。

さて、さて。漱石の滞在した前田家の風呂からは、当時の男尊女卑を垣間見ることができます。男湯は屋根伝いに入り口があり、女湯は外からしか入ることができません。それから、男湯は、湯があふれると、その湯が流れ込む溝があり、絶えず新しい湯が入っては流れ出る仕組みになっています。そしてその流れ出た湯が溝を通じて女湯の湯船に流れ込むのです。男湯は川の流れのように澄んだ湯、女湯は池のように溜まり淀んでいる湯というわけなのです。漱石のいた男湯に入ってきた女の人の気持ちとしては、たまにはきれいな湯につかりたいという想いがあったのかもしれません。

PS dialogue 2014.2

 

ピーエスの室内気候で重要な「空気の流れ」の発想と似ていますね。

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