トイレの美学

 

お風呂が無くてもいいけど、トイレはできるだけひろくしたい。
家を建てようと思ったとき、私はこんな夢を抱いたのだけど、これは珍しい好みでもないと思う。
私は、一日一回お風呂に入るより、三回シャワーを浴びたい。
家のお風呂を中途半端に広くするより、歩いてちょっとのところにある銭湯のひろびろしたたっぷりのお湯に、
ちゃぽんと週2回くらいつかってゆっくりするのがぜいたくだと思っている。
それよりなにより、大切なのはトイレ。私はトイレにいちばんこだわっている。

まずは広くなければだめ。
次に快適でなければだめ。
光がたっぷり入って、風が通って、外の気配があれば最高。
本当は、庭の真ん中に天井も壁もないトイレをつくりたいくらい。
家の中で一番のびのびリラックスできる場所がトイレでなくてはいけないのである。
というのも、家が仕事場の私にとって、仕事が進む場所と言うのは必ずしもデスクの前ではない。
パソコンとにらみ合いをしている間は逆さに降っても何も出ないのに、
トイレでぼんやりしているとき、シャワーを無心で浴びているときに、不思議とひらめきがふってくる。

そんなわけで、トイレは絶対におろそかにしてはいけない。
トイレが寒いなど、言語道断である。

そう、トイレの空間の質にわたしはこだわりたいのである。
空間全体がほんのりあたたかいのがいい。
風通しよくしても、寒くならないようにしたい。
でもそのために手入れに手がかかるようなデザインは困る。
頑丈であってほしい。とはいえ、はっとするシンプルな美しさがあるような、そんなデザイン。
それから、忘れてはいけないのは、トイレのタオル。
いつも乾いてふかふかで清潔でなくてはいけない。
ほかのところは我慢できるけれど、トイレだけは譲れない。

こんなトイレの美学がある人に、ピーエスはこたえます。

PS dialogue 2014.10

 

 

 

 

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