植物と気候

 

植物は、確かにそれが誕生したところの気候風土で繁殖していくのが幸せかもしれません。
けれど、ある植物が、ある土地で、相性の悪い気候に出会ったとき、必ずしもそれが植物の繁栄を阻むとは限りません。
それが例え人間側の都合によって引き起こされたものでも、植物と気候の新しい出会いが、植物の本能にはもしかしたら記憶されていなかったかもしれない新しい側面を引き出すきっかけとなることがあります。
そういった植物と気候の出会いの創造物は、人間の暮らしや食生活を豊かにしてくれるものの一つであるでしょう。

例えば、寒い不毛の土地と言われた北海道であんなにおいしいお米がとれるようになるなんて、温暖な気候で生まれたお米の先祖は考えたでしょうか。この広い大地でお米を作りたいという人間の情熱で、北海道のお米は寒さに強いものへと改良を重ねられ、ついに今では日本一を争う収穫量と味に到達しました。寒暖の激しさがお米の生命力を刺激していること、それから雪と寒さがお米を新鮮なまま貯蔵できる環境を提供してくれていることが、その要因となったと考えられます。

もう一つ、北海道にはおいしいメロンもあります。
メロンはアフリカや中東で誕生したとされていますが、今や北海道では名産品に、しかもそのおいしさから高級品になりました。
夕張メロンは、寒冷地には適さないけれど甘みが強くきれいなネットの張った母メロンと、欧州でも栽培されていた甘みは少ないけれど寒さに強く香りの良い赤肉の父メロンから生まれたそう。
昼には日光を充分に浴びて生長し、夜には冷え込みによって糖分を蓄える。
そんな北海道の気候が生んだ新しいメロンです。
収穫してから数日後には熟れてしまうという弱点は、それを逆手に取った産地直送の鮮魚のような優先販売という販売戦略によって、むしろ夕張メロンの価値に変わったのでした。

このように、植物と気候の新しい出会いのおかげで私たちの食卓はいっそう豊かになっていると言えるでしょう。
ですが、新しい価値は何もせずして生まれるわけではありません。
植物と気候とを仲介する存在があるはずです。
その気候をいかした快適な貯蔵庫、ハウス栽培の室内気候、温度と湿度のデザイン、など、植物と気候との仲介者の知恵と技術が、その出会いを価値のあるものに高めているのだと思います。

湿度と温度と室内気候の専門企業ピーエスは、そとの気候条件を取り入れながら、その気候とはじめて出会う植物にとって快適で、かついきいきと生育できる気候空間づくりに取り組んでいます。

 

PS dialogue 2015.4 (2016.5 再掲載)

TOPへ