湿度の文化 1

湿気を吸収してくれる畳や土壁、体と服の間に通気口を作る甚平や袴...じめじめ、むしむしした高温多湿気候に対峙するための様々な工夫は、数え上げたらきりがありません。それほどまでに、日本文化と湿度の結びつきは強いのです。

しかし湿度が生み出した文化は、”対策”だけではありません。例えば、湿度が高い地域では主に漆塗りや陶芸が発達しました。漆は、湿気がなければ乾かないという、ちょっと不思議な性質を持っているので、日本の梅雨や夏にはぴったりなのでした。漆塗りと金箔製造で有名なのは金沢ですが、金沢は雨が多く湿度が高い地域です。金箔を貼りつけるのにも漆を使いますから、どちらも発達する条件が金沢にはあったのです。

それから、蛍が飛び交う美しい風景も、昆虫にとって潤いをもたらす湿度があるからです。心地良い霧で覆われた苔生す軽井沢の風景も、湿気が作り出したものです。”屋根のない病院”とも言われる軽井沢の自然が、多くの文化人を魅了し、そこで多くの文化が生まれました。日本の湿度は、日本に豊かな自然と湿度の文化を作っているのです。
さて、日本の湿気文化は決して過去を振り返るだけのものではありません。湿度を愛し、湿度と闘い、湿度を日々探究することで、きっとまた新しい湿気文化が生まれることでしょう。例えばバスルーム。みなさんのバスルームは、湿度とうまく付き合っていますか?

PS dialogue 2015.9

 

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