湿度の文化 2

2013年12月、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。見た目の美しさ、バランスのとれた健康的な食事、季節の変化や自然の美しさの描写、などが食生活として社会的な慣習となっていることが評価されました。しかし、その裏に「湿度」に支えられた和食の文化があるのです。

和食独特の味の決め手となる味噌や醤油、みりんやお酒が存在するのは、日本の湿度によって生まれた、ある“カビ”のおかげです。
それは、麹菌。発酵に、最も多様に使われている菌種が日本麹カビ。またの名をアスペルギルス・オリゼといいます。日本麹カビが生息するには、夏は高温多湿で冬はカラっとした寒さのある日本の気候でしか手に入らないカビなのだそう。日本麹カビは、日本国民ならぬ「日本国菌」に認定されています。私たちの仲間ですね。
およそ1000年前に麹菌は発見され、それから麹菌を培養する種麹屋が生まれたのだそう。何百年もの歴史がある日本独特の職業ですが、今も種麹屋は全国に十数社しかありません。

湿度は、梅雨のじめじめとした気候を連想させるものとして、なんとなく厄介な存在だと思われがちです。
しかし、湿度によって生まれた麹菌が日本独自の和食文化を作り出したように、また湿度と闘うことで日本独自の民家や衣類が発明されたように、それから湿度によって日本の陶芸や漆塗りなどの伝統工芸が完成したように、日本の文化は湿度と切っても切れない強い結びつきがあります。

しかし日本の湿度の文化は、決して単なる過去の歴史遺産ではありません。今も湿度の文化が生まれているはずですし、これからもさらに新しい湿度の文化が生まれていくはずです。

さて、湿度について考える絶好の季節は何も梅雨や夏だけではありません。私たち日本人にとって湿度は同じ国民なのですから、一年中考えなくてはいけませんよね?
さあ、今年はどんな湿度の文化をつくりますか?

PS dialogue 2015.9

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