湿度の店

もし「湿度の店」というのがあったら、あなたはどうやって湿度を販売しますか?湿度に値札をつけて、八百屋さんみたいに並べるでしょうか。商品名はどうしますか?「70%の湿度」?・・・なんだか、わかりやすいようで、よくわかりません。じゃあ、「しいたけ栽培の湿度」という名前はどうですか?具体的になりましたが、例外も多いかもしれません。

「はい、これがあなたのほしい湿度ですよ」という風に湿度を単体で販売するのでは、本当に必要な湿度を提供するには何かたりないのではないでしょうか。そりゃあ湿度だけじゃなくて温度のことも考えなくちゃ、という意見が出るかもしれませんが、じゃあ温度といっしょにさえ考えれば本当に必要で快適な湿度は提供できるのでしょうか。少なくとも昔は、湿度はそうやって半ば単体で販売される傾向があったかもしれません。もしかしたら買う側もそのような考えの人が多かったかもしれません。そして、いざ「70%の湿度」を買ってみて、後からやっぱりほしかった湿度と違うと気づいた人も少ないのではないでしょうか。とはいえ、客がどんな湿度をほしいかを店員に伝えるのも、店員がどんな湿度を販売しているのかを客に伝えるのも、容易なことではありません。なにしろ、湿度には商品名がつけられないのですから。

どんな湿度がほしいのか、その湿度があると何がどうなるのか、湿度の変化をどう扱うのか、具体的にどのように実現するのか、といった湿度のビジョンが、提供する側も提供される側も十分に描けていないと、上記のように湿度を単体で、つまり加湿や除湿をする機械を単体で販売・購入する手段が取られがちになると思います。ですが、湿度がもたらす本当の快適さ、湿度によって作り出される価値、そして湿度から生まれる文化といったものが、果たして機械単体のやりとりで実現できるでしょうか。より良いもの、より高い価値を求めるのであれば、従来のやり方では不十分です。今、もう一度「湿度の店」を考えましょう。あなたは店主として、どのように湿度を販売するでしょうか。

PS dialogue 2016.7

 

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