学際的な湿度

湿度って、どの学問に属するのでしょうか。物理学?理工学?気候学?生理学?環境学?生物学?建築学?考古学?電子・電気工学?植物学?スポーツ科学?音楽?芸術学?食品学?…ひとつの答えを出すのは難しいかもしれません。なぜなら、湿度はそれだけでは存在しえず、つねに何かとの相互作用の中で存在するものですから。つまり、湿度はそもそも学際的な存在なのではないでしょうか。当たり前といえば当たり前です。加湿器を作りたいと思っても、湿度の知識だけでは作れません。反対に湿度の知識がなくても作れません。適切な湿度で文化財を保護したいと思ったら、文化財についての深い見識も湿度の知識も必要です。動植物にとって快適な空間、スポーツ選手のための快適な湿度づくりも同様です。湿度を捉えるには、いろいろな角度から見なくてはいけません。

しかし、そうして湿度自体が学際的な存在にもかかわらず、実際に湿度を扱うときには、その学際性があまり尊重されていないのではないかと思うのです。植物の専門家が一人で湿度の問題も解決しようとしたり、レストランのシェフが料理を作りながら店の湿度も管理したりするといった状況がよくあると思います。ですが人間はそんなに万能ではないですから、あれもこれも一人でやろうとすると、かえってもともとの専門にもダメージを与える結果になりかねません。また、そうやってデザインされた湿度は、あまり質の高くない中途半端な湿度になってしまうかもしれません。

湿度に取り組むときは、学際的な集いが必要不可欠です。それにはやはり、湿度の専門家がいなくてはいけません。湿度の専門家というのは、さまざまな専門分野を学際的に統合させながら、オーダーメイドで湿度をデザインすることを専門とする人だと考えてみてください。時に加湿器を活用したり、植物を投入したり、時に湿度を貯めて使う方法を提案したり、そのままの外の湿度を取り入れたりなどして、ほしい湿度をデザインする人です。ですが、もちろん湿度の専門家だけでは、実現しません。1+1=3の価値を生むためには、湿度の専門家と他分野の専門家がともに湿度に取り組むことがなにより大切ではないでしょうか。

PS dialogue 2016.7

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