湿度と言語、そして歌

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、それぞれの言語はそれぞれの音の作り方があるのでしょう。なぜ日本語には「あい」「うえ」など母音だけで構成されることばがあり、日本語全体を見ても、なぜ母音の存在が大きいのか。それに対して、なぜ英語では子音が連なりやすいのか。そのような疑問は、その言語が生まれた気候との関係から部分的には説明ができるのではないかとも言われています。たとえば上記の例で言うと、温暖な気候の地域では、母音を多用する傾向にあり、寒冷な気候の地域では、逆に子音を使う言語が多いと言われています。その理由を、温暖な地域と寒冷な地域の人の活動場所の違いから説明しようとしている研究者もいます。温暖なら外で主に活動することになり、そして離れたところにいる人に声をかけるとき、母音をよく響かせる必要があります。遠くにいる人に向かって「TOMARE!」と叫ぶ方が、「STOP!」と叫ぶより、ずっと確実に情報伝達ができるはずです。一方、寒冷な地域では、洞窟の中で、子音が聞き取れる距離で、一箇所に固まって過ごすことも多かったのではないかと想像できます。

それでもこれまで学問の世界では、気候環境と言語の関係はあまり強くないのではと言われていましたが、今年、マイアミ大学の言語人類学者によって「湿度」と言語の関係の一端が明らかにされました。世界の3700を超える言語を調べたところ、乾燥した地域よりも湿潤な地域のほうが、複雑な声調を使う言語が多いということがわかったのだそう。声調というのは、中国語やタイ語のように、一つの音でもその音の出し方(上がり調子で、下がり調子で、など)が様々あるような発音のシステムのことで、そのような言語では意味の区別のために声調が大きな役割を担っています。声帯が乾いていると、音の高さに変動が生じやすく、音量も乱れてしまいます。ですから、乾燥した地域ではあまり複雑に音の高さを調整するような言語は生まれにくいというわけです。音楽的な要素を持った言語を美しく発声するには、のどが潤っていなくてはいけないのです。このことは、プロの歌い手の室内の湿度に対するこだわりにも通じるのではないでしょうか。プロの歌い手にとってなぜ湿度調整が大切なのかという理由が、ここにあります。言語の発達でさえ湿度が重要な決定因子の一つになっているのですから、微妙な音の高低や音量を調整する必要のあるプロの歌い手にとって、湿度調整の重要性は明らかです。

生き物としての人間が、その地域の湿度によって鳴き方を変えている。そう考えると、私たちは意外と気候に敏感な生き物なのだと思えてきますね。さてさて、これを読むみなさんが、湿度について、そしてその言語と歌との関係について思いを巡らす機会になれば幸いです。生き物として、本能的に、湿度調整の必要性を感じた方は、ぜひ湿度と温度の専門企業ピーエスにご相談ください。

PS dialogue 2016.7

 

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