夏の三角形

 

夏の気配は肌からやってくる。

肌は湿度のレーダーです。
昨日までなかった湿度の重みを肌は敏感に察知して、夏の到来をあなたに告げるでしょう。
湿度の季節がやってきますよ、と。そう、夏は暑さだけの季節だけではありません。湿度もある。
ついでに、もう一つ付け加えましょう。涼しさです。
暑さと湿度と涼しさ。この三つが描く三角形が夏の課題であります。この三つとどうやって向き合うのか、この三つをどのようにデザインするのか、それに夏そのものがかかっているといっても過言ではありません。

暑くなければいいのか、涼しくなくてはいけないのか、あるいはからっとしていればいいのか。暑くてもからっとしているのがいいのか、涼しくてしっとりしているのがいいのか、あるいはさらっとしていて涼しいのがいいのか。どれが自分にとって最も快い夏の過ごし方なのか、あなたは知っているでしょうか。このような事は、夏の室内の気候をきちんとデザインしてみないとなかなか分からない事です。暑くなりすぎたな、と思ってその都度瞬間的に涼しくしたり、太陽の熱を蓄熱してあつあつになった部屋を急冷したりしていては、夏とのいたちごっこに振り回されることにばかり忙しく、自分が心地よい暑さあるいは涼しさを積極的に描くことはなかなか難しいものです。

ピーエスは、日本の強大な夏と上手に付き合うためには、部分的な対処で乗り切るのではなくて、もっと全体的な視点で夏の室内の環境をデザインすることが必要だと考えています。部屋から部屋へ移動するたびにうだるように熱くなった空間をその都度急激に冷やすのではなくて、家全体が暑くならないようにつねにゆるやかに整えておく。熱帯夜、寝苦しくて汗でパジャマがべっとりとくっついて目を覚ます。一時間寒いくらいに涼しくして、その涼しさの貯金がゼロになるまでのつかの間の眠りに逃げ込むのではなくて、一晩中通してなんとなく涼しいくらいに整えておく。たとえば、こんなふうに室内の夏を全体的にデザインするのです。

そうすると、わかってくる。
ああ、自分が苦手なのは、暑さではなくて、過ぎたる湿度だったのか、という人もいるでしょう。あるいは、涼しくさえあれば、夏ってしっとりと潤ってすばらしい季節だったのだな、と思うひともいるでしょう。もしくは、暑さと涼しさとの猛烈な温度差を行き来することこそがもっとも辛かったのだ、と分かる人もいるかもしれません。

今年こそは、あなただけの夏との付き合い方をみつけませんか。

 

PS dialogue 2017.5

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