ウチとソト

日本の家とヨーロッパの家。その建築様式の違いは、ウチとソトの区切り方にはっきりと表れています。
日本の家屋は、壁という壁がなく、内側と外側が明確に隔たれていません。外の自然が家の中へと緩やかにつながっている構造をしています。土間や縁側、坪庭のように、家自体が半分屋外や半分屋内といったウチとソトの曖昧さを持った空間です。
では、特に寒さの厳しい北部のヨーロッパの家はどうでしょう。壁は分厚く堅牢な石造りで、窓は小さく、外気が入り込まないように玄関が二重になっていることもあります。ウチとソトが明確に区別された空間と言えるでしょう。

長い長い時間をかけて育まれてきたこの建築の文化は、技術としてだけではなく、私たちのからだにも受け継がれてきているのではないでしょうか。日本人とヨーロッパ人の体はなぜ違うのか。それは気候や風土が違うからだ、というのは確かに一つの答えです。でも、その気候や風土は自然によるものだけではなく、文化によってもつくられているのです。自然と文化が複雑に相互に影響し合って風土がつくりだされる。だとすれば、このウチとソトの区切り方の違いも、私たちのからだに影響を与えていると考えてよさそうです。私たち日本人は、長い間ウチとソトを区切らない、いつでも緩やかにつながった空間を生きてきました。だから、そのからだの感受性は、きっと自然とゆるやかにつながり、ソトへ開かれたものであるはずです。日本人のからだは、締め切られた気候ではなく、ウチとソトがあいまいな気候を生きてきたのです。

これは、あなたの快適をあなたのからだから考える最初のステップです。それでは、あなたのからだは他にはどんな特徴を持っていますか?どんな空間を、どんな気候を生きてきましたか?あなたのからだが感じる、あなただけの快適をもっと研究してみましょう。

 

PS dialogue.2013.05

 

TOPへ