未知との遭遇


人間は恒温動物です。自分で自分の体温を保つように体ができています。そのために、皮膚は周囲の湿度と温度を敏感に察知します。体温が上がると、汗をかいて、汗が蒸発するときの気化熱で体の表面を冷やします。汗が蒸発するためには、周囲の空気が乾燥しているほうが好都合ですが、風があると蒸発しやすくなります。湿度と温度はいつも関係しています。面白いです。

ところで、皮膚(体の表面)が察知する“温度”というのは、何の温度なのでしょうか。代表的なものは、空気の温度(気温)、壁や床や天井などの触れていないけれども伝わってくる周囲の表面の温度(放射温度)、直接触れている衣服の温度、太陽から届く熱の温度(放射温度)が挙げられます。いろいろな温度がある、というのは考えてみると面白いです。

私が最近知ったことがあります。月の環境です。月には空気がありません。ですから、月で気温を測ることはできないのです。また、月には昼と夜があり、太陽光があたる場所と日陰の場所があります。日向は100℃以上、日陰は-170℃以下になるそうです。これは、月の地表面の温度、つまり、月の放射環境を表しています。放射環境が即、人間の生命に関わるのです。月に行った宇宙飛行士は、この特殊な放射環境の中で活動できるように宇宙服を着ているのです。放射の影響力、力は、とても大きいと感じました。


私たちは地球に暮らしていて、普段は建物の中、室内にいます。もしもこの室内が月にあったら、なんてことを考えてみたらどうなるでしょう。窓から入ってくる日差しは太陽光、月の日向に相当するのは熱を蓄えた外壁、月の日陰に相当するのはひんやりとした室内の壁…。でも実際には、私たちの身の回りには、放射環境と空気とがある。それぞれが別の働きをしている。ということを思い出してみるわけです。とりとめのない話になりました。

PS dialogue 2013.6

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