21世紀のヴァナキュラー①

21世紀のヴァナキュラー建築をつくろう①
ヴァナキュラー建築とは、その土地や地域の固有の気候風土の中で培われてきた建築・建物(様式)と言うことができる。ヴァナキュラー建築として呼ばれているのは、世界各地の伝統的な建物である。

日本では、高床式倉庫や、寺社建築、藁葺きの古民家などが含まれると思う。それらの特徴は、高温多湿な夏の長い日本の気候風土に合ったつくりをしていることである。

 

21世紀に生きる私たちは、これらの伝統的なヴァナキュラー建築に学ぶことは多い。

自然に対する姿勢を忘れないためにも。

では、21世紀の私たちが、今からこれらの伝統的な建築で活動することは現実的なことなのだろうか。

ライフスタイルのひとつとして、伝統的な建築に、伝統的なスタイルで住まうことを選択する人もいる。しかし、それはほんのごく一部の人にしかかなわないことだろう。

伝統的なヴァナキュラー建築に敬意を払いつつ、さらなる高みを目指すこと。

21世紀の今に生きる私たちが、知を結集し、今作りうる最高峰のヴァナキュラー建築をつくること。

これが、今を生きる私たちの役割ではないだろうか。

 

数百年の時を経て受け継がれる優れた伝統工法は、それが生まれた当時の最先端の技術と知恵の結晶だったはずだ。

地球規模の環境問題、エネルギー問題、少子高齢化など、私たちをとりまく問題はたくさんある。

しかし、一番私たちが自身の問題としてかかえているのは、本来の人間らしさを最大限に発揮できる快適な環境が奪われているということではないだろうか。

 

もっとも顕著なのは都市環境である。自然がなんと少ないことだろうか。画一的な制御された空間に閉じ込められ、その中でしか生きられないというのは不幸である。人間は、野性的に、自然に、開放的に、自由に活動したいはずなのに。

伝統的なヴァナキュラー建築が、自然に敬意を払い、自然に対して開放的であり、人間が自然の中で快適に活動できる空間を作り上げている事実から私たちは学ばなければならない。

 

兼好法師は、日本の住まいは夏を旨とすべしと書いた。現代の作家はなんと書くだろうか。日本の住まいは、春夏秋冬(はるなつあきふゆ)それぞれを旨とすべし、であろうか。いや、いろいろな好みがあるのだから、日本の住まいは当人が最も好きな季節を旨とすべし、であるかもしれない。

兼好法師が生きた鎌倉時代は、公家や武家屋敷など、人々の生活の場所と仕事の場所が住まいであった。21世紀の私たちは、生活の場と仕事の場が一緒の「住まい」である人もあれば、それらが分かれている人もあり多様である。現代の私たちの活動の場が、一言で「住まい」と片付けることはできないのは言うまでもない。

 

21世紀のヴァナキュラー建築をつくろう、ということは、実際につくるということである。

そして21世紀の英知と最先端の技術とを結集させてつくりあげるには、多様な専門家たちの力が必要ということである。

プロジェクトが結成されたときに、では、まずどこで何を最初に21世紀のヴァナキュラー建築としてつくりあげることになるのだろうか。それは天にお任せなのかもしれないけれど。

 

PS dialogue 2013.12


ピーエスの室内気候を考える学際的な様々な視点のひとつが、21世紀のヴァナキュラー建築、ということになると思います。②で引き続き考えていきたいと思います。

 

他にもこんな記事がありますよ!

風土と気候から、生姜に快適な建築を考えると?→生姜のヴァナキュラー建築

ピーエスのモノづくりの歴史は、21世紀のヴァナキュラー建築の考え方に呼応します→ ピーエスグループサイト

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