スイス哲学2

スイス最大の都市チューリヒは大学の町です。チューリヒ大学とチューリヒ工科大学が有名です。

さて、この2つの大学の古い校舎内を散策してみると、気が付くことがあります。椅子と机が並べられた通路をよく見つけるのです。学生たちはそこで一人で勉強したり、友人と共同作業したり、軽食をとったり、休憩したり、それぞれ思い思いに過ごしています。学生が自由に活動することのできる空間が豊富に備わっているようです。

静かに勉強したい人や文献を参照したい人のためには、もちろん図書室もあります。しかし、もし活動の仕方が制限される図書室しかなかったら、学生の活動意欲も制限されてしまうのではないでしょうか。
自由な活動空間が点々と存在するため、ちょっとした活動意欲も報われます。授業開始までちょっと時間があって、それならちょっと勉強しようかなと思ったとき、場所を確保することが難しくないのですから。
通路の幅を広くとった空間デザインが、このような活動空間を実現しています。人が通過しても気にならないほど、十分な広さが確保されています。

でも通路で勉強するのは寒そうではないでしょうか。しかしその心配はありません。チューリヒの大学の通路をよく見ると、外壁に沿って放射暖房が設置されていることがわかります。
活動空間のベースは、なによりもまず、空間の気候デザインです。通路で快適に過ごせるからこそ、そこに活動が生まれているのです。特にこのように閉じられていない空間には、放射暖房による気候デザインがぴったりです。
チューリヒのこの2つの大学では、まるで建物の空間と気候が一体となって、柔軟かつ有機的に存在しているように感じるのです。

PS dialogue 2013.05
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