気候プランはお早めに!

 

シルダの町の人々は、新しい三角屋根の市庁舎を建てました。
町の人々は、皆、この新しい建物に大満足でした。
そして町長が、一番にこの建物の扉を開けて中へ入りました。
しかし中は真っ暗です。
なんと窓を作り忘れてしまったのです。
そこでシルダの町の人々は、太陽の光をバケツやじゃがいもの袋に入れて建物の中に運ぼうとしました。
でも、もちろん中はまったく明るくなりません。
そして結局、シルダの町の人々は、市庁舎の屋根をとってしまいました。

・・・

これはおよそ400年以上前から伝わるドイツの民話。まさかこんな愚かな失敗はするものかと思うかもしれませんが、ことばを置き換えれば今でも似たようなことは度々起こっていると言えるのです。というのも、シルダの人々は建設する前に室内の照明プランをきちんと立てなかったわけですが、今だって、ここにも窓をつければよかったとか、もっと大きい窓にすればよかったとか、使ってみて住んでみて初めて気付くことは少なくありません。それは、室内の照明デザインが後回しにされた結果です。光だけでなく、風通しや、温度、湿度、太陽放射などが複雑に重なり合ってデザインされる建物の「室内気候」は、建てた後で後悔しても、もう遅いのです。

こんなこと、ありませんか。リビングから庭につながる広い空間をつくったのに、夏に暑すぎたり、冬に寒すぎたりして、せっかくの空間を活用できなかったり。のびのび活動するために高い吹き抜けのリビングを実現したのに、冬は暖かい空気が上へ上へと行ってしまってぶるぶると震える毎日を過ごすことになったり、夏はなかなか涼しさを感じられなかったり。きれいなバスルームだって、もし湿気がたまってひどくじめじめするような環境だったら、台無しです。建物が完成してから、こんな室内気候あんな室内気候がほしいと思っても遅いのです。気候プランは、建物の構想段階からいっしょに考えなくてはいけません。

まずは、そこでどんな活動がしたいか、そのためにどんな室内気候がほしいかを想像してみるのはどうでしょうか。例えば、これからの夏に、窓から入ってくる新鮮空気であふれた涼しい森の中のような気候でぐっすり眠りたいという思いがあるならば、それを実現できる気候プランを立てていくというわけです。

ピーエス ダイアローグでは、エッセイを通して快適な室内気候のあるライフスタイルを提案しています。目指すライフスタイル、ほしい室内気候が見つかりましたら、どうぞピーエスに声をかけてください。もっとこんな気候がほしいというご相談も大歓迎です。決してシルダの人々のようにならないために、気候プランはどうかお早めに!

PS dialogue 2015.4

 

 

例えばこんな室内気候があります。

寝室の、洞窟で眠るような気候
リビングの、おもてなしの気候
子どものための気候
仕事と暮らしのための気候

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